SREから経営者になって4年が経ちました

はじめに

SRE NEXT 2025に行き、下記の発表を聞きました。そういえば自分もSREから経営者になってたけど、ろくに情報発信してなかったと気がつかせてもらえたのでアウトプットします。子育てや実務に忙殺されて、対外的なアウトプットが足りていないことには反省しかないです。歯を食いしばっています。

speakerdeck.com

経営者になったときの簡易なアウトプット

blog.hokkai7go.jp

前提

2021年4月から 株式会社I-Styleの取締役CTOをしています。アイスタイルといってもアットコスメさんの方ではないです。ややこしくてすみません。今現在取締役含めて7人の小さな会社です。取締役以外はエンジニアのみです。

事業としては、情報システム部門コンサルティングと、プロジェクトとしてSIerから構築や移行案件をやったり、医療情報システムのコンサルティングをしています。

きっかけ

はてなでSREをしていた頃から、社長の板垣からは声をかけてもらっていましたが、SREが楽しいから待ってくれと言い続けていました。オンプレミスの撤退作業や、社内DNS更新の仕組みをAWS Lambdaで動くようRubyで書く仕事が落ち着いて一息ついたころにはてなを辞めたと記憶しています。

4年間何をしていたか

経営者になりたての頃

自分を経営者に引き上げてくれたのは社長です。また自分は創業者ではないので社長と考えや認識がズレるのはよくないだろうと考え、密に話すように心がけていました。

チャンスを掴む

SRE NEXT 2025の飲み会やAsk the speakerコーナーに発表者の方と座談会として話していたことですが、社会人をやっていると急にチャンスがやってきます。そのチャンスを掴む勇気が必要です。また、チャンスをくれた人には説明責任があるのでその人とよく話すと良いと思います。自分の場合はChef実践入門という本を書く機会をもらえたことと、経営者になったことがこのチャンスにあたるものでした。こうしたチャンスを掴んだあとはこれまでに経験したことのないことへの挑戦が待っています。様々な能力の向上が必要だったり、思考の様式をアップデートしていく必要があったりします。つまるところゲームチェンジですね。生存戦略を変化させる必要性が生じたと言えると思います。チャンスを掴んだらあとは腹を括ってやっていくしかないですね。

チャンスを掴むことにより、これまでの延長線上にないところに引き上げてもらうイメージ

文化づくり

当時は書きやすいWiki的なツールがまだ社内になかったので、Confluenceを導入しました。前職のはてなはアウトプット文化が強烈に根付いていたし、自分もシュッとアウトプットしたいのでこのようなツールが必要でした。その上で技術情報置き場をConfluenceに作り、自分がまず細々と社内向け技術記事を書いていくということをしていました。

当時はふりかえりの文化がありませんでした。前職のはてなでは、すくすく開発会という名前でスクラムマスターやふりかえりの支援をやっていました。仕事を通して強くなりたいし、メンバーのみんなにも強くなってほしいので、ふりかえりの文化を導入しました。

developer.hatenastaff.com

はてなでは通称ギベンと呼ばれる技術勉強会がありました。これを完全に真似ているわけではないのですが、会社に技術勉強会を導入しました。これも動機としては仕事を通して強くなりたいし、アウトプットの習慣をみんなにつけてもらいたいからです。

これらのことは技術者文化つくりだと思っていて、この記事に書いたように一朝一夕ではどうにもなりませんね。とはいえこれまでの会社でのやり方を参考にできますし、自分がやりたいようにできるのは楽しいことでした。すでにあるツールを使うとか、稟議書を書いて提案を上げるという従業員のときとは違う動きなのでこれもゲームチェンジだなと思いました。

blog.hokkai7go.jp

ここまでかいた上記の内容はこれまでの会社で得た知見を適用しているものばかりです。独創性はあまりないと思います。

心構え

会社や事業の責任を負うことになりますし、自分の後ろにはもう任せられる人がいないという意識が重要になります。この意識や姿勢は、はてなを辞める際、はてなの大西さんに教えてもらいました。ありがたい餞の言葉だったと思っています。

取締役はfinally節です。tryやcatchがないパターンもあります。

変化したこと

取締役になることで労務管理の対象から外れるので勤怠をつける必要性がなくなります。従業員ではなく使用人になります。雇用保険からも外れます。私は24時間365日働き放題プランと揶揄して呼んでいます。これもゲームチェンジな出来事ですね。

hcm-jinjer.com

そんな中、1人目の子どもが生まれました。ここからは子育て中の経営者となります。この話は後述します。

職歴についてですが新卒で就職してから14年で現在7社目と転職を繰り返してきました。従業員でいる間は仕事の範囲はある程度限られています。メンバーシップ型の雇用であっても無限の責任を追うことはまずありません。困ったときは上長に相談すればいいし、最悪辞めるというカードを常に持つことができます。これは非常に強いカードです。しかし取締役はそうはいきません。辞めることはできますが、従業人よりも辞めるハードルは高く感じています。取締役になることで仕事を続けることについての意識が相当大きく変わりました。

セールス

セールス専任はいないので社長と自分が中心にセールスをやっていく必要があります。難易度高めの案件をブログや事例インタビューにしてもらうことで露出を増やすということを少しずつやっています。

クックパッドさんのGoogrenameでは、Acknowledgementsに社名と名前を載せてもらいました。 techlife.cookpad.com

クラスメソッドさん事例インタビュー(ちなみにAFLSというサービスは終了になっています…) classmethod.jp

このような外部露出はたくさんできるものではないですが、今後も少しずつ増やしていきたいです。

新規事業

これまでのことを続けているだけでは未来がないし、発展もなければ成長しにくいです。新しいことをやる必要があります。情報システム部門コンサルティング案件や、クラウド移行の案件では自分としては新しく学ぶことがあればラッキーという感じがありました。自分は知的好奇心ドリブンで動くタイプなのと、学ぶことがたくさんあるような鉱脈または泉とも言えるテーマが必要でした。自分にとっては医療情報がこのテーマです。

blog.hokkai7go.jp

医療情報を学ぼうと思ったモチベーションに感して下記記事で書ききれなかった背景があります。医工学を学びたいと大学時代にぼんやり思っていたのが再燃したと言えそうです。インフラエンジニアやSREの経験で情報工学の実践はある程度しているので、この知識を医療情報分野に持ち込んだら役立つのではないか?という考えがありました。情報システム部門のエンジニアの採用に各社が苦戦しているのと同様かそれ以上に医療機関でのエンジニア確保に苦労するだろうと思ったからです。そしてこれはどうやら事実のようです。

また、会社の今後の展開を考えたときにIT系以外の会社からお仕事をもらえると良いなと考えていたので、医療系のIT業務について理解を深められそうな医療情報技師に興味を持った。本業の方で時間が確保しやすい状況だったから資格取るかと言いやすかったという背景もある。他にもあるけど、書ききれないので省略。

そして医療情報技師の資格をとり、医療情報学会に行くようになりました。この分野での最新動向や、業界の雰囲気を感じ取ることができました。こうした動きをしていると、実際に医療情報分野のお仕事をいただくことができました。一つ目の案件を開始するまでには苦労があると予想していたので、うれしい誤算でした。これで医療情報分野の実務を学ぶことができるようになりました。

会社としてプロダクトを持っているわけではないので、新規事業のイメージが違うかもしれませんがうちの会社ではこんな感じの新規事業立ち上げでした。新規事業という単語の指す意味や定義が非常に曖昧なので仕方がないかもしれません。

資金繰り、税金や社会保険料

社長や、経営者の悩みについて情報収集するために経営中毒というポッドキャストを聞くようになりました。自分の専門領域ではないものも自分ごととして興味を持つようになりました。直近の経営中毒のテーマが資金繰りでした。税金や社会保険料が高いですね。給料を上げても税金や社会保険料に化けてしまうので手取りを増やしにくい…。

podcasts.apple.com

子育て中の経営者の苦悩

経営者という立場上、品質の最終責任を持つことが多いです。また、現場ではレベル的に厳しい難易度の高い案件を処理する役として呼ばれることもあります。しかし子育て中のため時間は限られています。その中で品質チェックをしたり、難易度高め案件のキャッチアップをする必要があります。そのため自分は情報のI/O速度を高める必要に駆られました。今思えばゲームチェンジだったなと思います

さいごに

目標や評価、マネジメントの話も書きたかったけど省略しました。アウトプットが上手ではないのですべてを網羅するのは時間的にもモチベーション的にも難しかったです。

SRE NEXT 2025の会場や飲み会では経営者のみなさんとお悩み相談会ができて非常に有意義でした。会社のFinOpsの話ができたのがよかったです。会社や事業の戦略を考えると言うDeepWorkをやりたいが足元の実務に時間がとられなかなか深く考える時間を確保しにくいのは経営者あるあるなのだなとわかりました。さらには子育て中の経営者トークができたのもありがたかったです。

SREの考え方やプラクティスを会社や事業や組織に適用していくということは全然できていないので、まだまだやること/やれることがたくさんあるなと思いました。やっていきましょう。